たかBONの徒然読書日記

倒錯の森で


連載第一回
「いまさらながら有害図書を・・・」


ある晴れた5月

職場と駅とを結ぶ近道に、本屋の入ったビルの中をつっきるコースがある。
近道をしようとそのビルに入ったが最後、本屋に吸引されそうになるこの魔のコースは、本好きにとっては苦難の道でしかない。
つねに足早に、視界に本屋の入らぬよう最新の注意をはらう。そこまでして、この道を通るのは、深層心理に「まあ、いいじゃん。仕事中でも本屋ぐらい入っちゃえよ」という、非常にポジティブシンキングな悪い悪魔が巣食っているからに違いない。
先日も、仕事で駅前の銀行へ行く途中だったのだが、ふらふらと本屋へ吸引。よたよたと本屋中を徘徊し、大した物がなかったので外へ出ると、人知れず、ワゴンセールをやっている。店員の汚い字で「このワゴンの中50%オフ」と書かれた紙がぐしゃっと張られているさまに、なんか期待もてない感じゅうぶんではあったが、覗いて見ることに。
「あっかんべーぜ 山田邦子」「輪ゴムで五十肩が治る!」「消えたマンガ家 3・4・6・8巻」[ハゲ克服パーフェクトガイド」
中途半端な品揃えにワゴンセールの醍醐味を感じるが、別に欲しくはない。
「こんなもんか」とあきらめたその時、
「秋田昌美」・・・。
まさかと思ったが、秋田昌美の本がある。1、2、3。3冊も!50%オフで!
即買です。ほくほく。
その他、家畜人ヤプーの沼昭三のエッセイ集、洋書の「スカトロジー大全」も入手。
なんせ、全部1冊二千円以上する本なので、半額は嬉しい。しかも古本じゃない。

早速、秋田昌美「性の猟奇モダン」を開いてみると、その中に、「梅原北明」のことが載っていた。
エロに興味を持つものなら、一度はその名を聞いたことのあるだろう伝説のエロ編集王だ。
あの有名な変態雑誌「奇譚クラブ」よりずっと以前に、「変態資料」「グロテスク」などのエロ・グロ雑誌を次々刊行した人物である。
戦前の日本において、エロをやるということは公安当局との戦いでもあり、北明は発禁処分から逃れるため、あの手この手で応戦。けれどそのさまは飄々としていて堂に入っていてすてきだ。
この時代から思えば、今はどんなにエロに自由寛大なのかと感じる。
あまりにも寛大で、エロ無法地帯となった日本は「有害図書」なんて条例をつくったが、結局取り締まる側は、出版される速度に追いつかないのが現状なのだという。

さて、ここからが本題である。

連載第一回のテーマは「有害図書」なわけだが、「有害図書」という言葉で私が思い出すのは、1989年に起きた「連続幼女誘拐殺人事件」だ。
犯人のMくんの部屋からおびただしい数のマンガやビデオが見つかり、そのほとんどがホラーやエロだったもんだから、彼のパーソナリティーそのものが、これらのマンガやビデオによって形成されたのだという方向へ議論は展開されていった。「オタク」という言葉が差別的に使われ(NHKの放送禁止用語だったというが、今現在はどうなのか)、オタク文化にもケチが付き始めた。
現在日本には、各地の自治体に青少年育成条例などと称して、少年達は、酒飲んじゃダメ、タバコ吸っちゃダメと、とやかく言う条例があるようなのだが、早速ここへ有害図書も加わった。最近は、図書だけでなく興行(映画やビデオ)、インターネット、パソコンソフト、風俗店、などなど規制範囲がかなり拡充しているようだ。

実際ある条例の中の有害興行を見てみると、アダルトビデオのタイトルが30本ほど並んでいる。
「痴漢ハレンチ学園 制服娘の本気汁」
最初から、こんなタイトルでとばしてくれる。
3本目ぐらいまでは制服娘系なのだが、以下27本がすごい。
「月曜日の不倫妻 性欲まみれ」
「人妻浮気調査 主人では満足できない」
「和服熟女の性生活 −二十・三十・四十歳−」
・・・これって、選んでる人の趣味ですか・・・。
少年たちが観るとはとうてい思えない人妻不倫系がずらり並んでいるのだ。
一つだけ女優ものがあり、それが「愛染恭子VS小林ひとみ」だというのが、哀愁をそそる。
さらに、
「ポリス」「郵便屋」
に関しては、タイトルだけでは有害性がわからない。

日々、あまりにも速い速度で、情報は回転していくというのに、1年以上前に更新された有害興行リストには無意味さしか残らない。
今、誰もが正しいのか否か疑うことを放棄したマスのコミュニケーションの中では、全ての情報は与えられて然るべきである。
無味乾燥で受身なだけのエロ世界で危惧されるのは、性犯罪を誘発する危険性よりも探究心や思考力を欠いた現代人の腑抜けさだ。
社会的システムそのものが変革した現在で、戦前の発禁本然としたエロ摘発になんの意味があるのかもはや見出せない。

日本は戦後、人工中絶手術の適用範囲が大きく広げられ、堕胎率が出生率を上回ったという、世界でも稀に見るエロ大国だったという。
民俗学的見地からしても、各地に性神が数多く残り、今でも性にまつわる祭りはたくさん行なわれている。
「古事記」に有名な「天の岩屋」のエピソードにしたって、天細女命が衣装をはだけまくって露出踊りをし、太陽が再び輝いた。
元来日本のエロに陰鬱さは微塵もなく、ええじゃないか的パワーを感じさせるものなのだ。
ならば今必要なのは、「明るく、朗らかで、パワフルな、エロ」なのではないか。
出版の速度におっつかない有害図書規制は、観点を180度転換させるべきである。
そこですすめたいのが、
「文部省指定有害図書」の制定だ。
明るく朗らかで、パワフルな有害図書を読ませることにより青少年の健やかな性を育成。ついでに豊かな感受性や思慮深い思考力も育てる。
小学校の道徳の時間では、「指定有害図書」を読んでの検討会をディベート方式で行い、世界にも通用するエロのパイオニアを排出してもらいたい。

そして、記念すべき第一号指定図書には、自分の勝手な判断だが、
「町野変丸」
を推薦したい。
彼こそが、明るく朗らかでパワフルな性の伝道師となる人物であろう。
以下に、彼の功績を紹介し、記念すべき第一回目の連載の〆としたい。
では次回もまた、倒錯の世界を探検しよう。


<町野変丸の世界>

兄のイチモツ大好き少女。「わーいオチンチンだーっ」このストレートな表現に、おもわずにんまりしてしまう。女子たるもの素直が一番さ!明るく元気に育って欲しい。
兄のトレーナーのロゴにセンスが光る。
筋肉侍(全身筋肉)の筋肉イチモツに興奮する男子学生。日々お尻の穴を拡張するまめさと、努力を惜しまない姿に、世の男子諸君は学んで欲しい。

兄との近親相姦シーンに友達乱入。山田君(おしゃまパンダ)佐藤君(一つ目小僧)は、とてもこの世のものとは思えないが、4人で仲良く御乱交。どんな人間(人間以外でも)とも仲良くする精神を学びたい。 こちらのつるっとした人も兄さんの同級生の山田君。こんな同級生がいる学校は本当に素敵だ。

陰部にミッチリとホッカホカなもち米を詰めて、アソコで餅つきをしてもらうのがなにより快感な女性。
うーむ。この、アバンギャルドな発想。柔軟な頭を育てて欲しい。
こちらは、バタフライナイフ大好き少女ゆみこちゃん。今をトキメクバタフライナイフで、最後にはほとんどの部分の体を切り刻んでしまい、「みんなは真似しないでね。」と明るく諭す。
とても教訓的である。
「いってきまーす」「あーん遅刻しちゃうー」「きゃ」(何かにぶつかる)「いったーなによーもー」ほとんどの町野作品がこの始まり方であり、出てくる女の子の名はみんな「ゆみこ」ちゃんである。人生マンネリも大切だということを教えてくれる。 多分、これが町野作品の中でも唯一の全2巻におよぶストーリーマンガだと思うが、これすらあの人気アニメのパロディだ(中身は無関係だが)。人生なめてかかりたい。